近年のPCKに関わる研究の動向と理科授業【その7】

 この記事は、近年のPCKに関わる研究の動向と理科授業【その6】の続きとなります。

 

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 本記事では、PCKのリファインドコンセンサスモデル(RCM)がどのように活用されているか、どのように活用できるかを示すことで、これまでの記事のまとめとしたいと思います。

Carlson, J. et al. (2019). The Refined Consensus Model of Pedagogical Content Knowledge in Science Education. In: Hume, A., Cooper, R., Borowski, A. (eds) Repositioning Pedagogical Content Knowledge in Teachers’ Knowledge for Teaching Science. Springer, Singapore.より引用

 

このRCM、どう使うの…?

 PCKのRCMの使い方を大きく分けると

・学校の先生が勉強する用

・研究で使う用

 の2つの使い方があります。実際にどんな風に使われているのか見ていきましょう。

 

学校の先生が勉強する用

 オーストラリア・アメリカ・ロシアなどでは、RCMを利用した学校の先生の研修が行われた事例があります。図の中に学校の先生と生徒の間に起きている学習に関わることや、学校の先生自身の活動を位置づけることで自分の知識はどのような種類のものかを整理できるようです。また、それらの学習や活動がどこから影響を受けているのか、影響を与えているのかも整理することができるため、理論と実践をつなぐ架け橋となる手段を提供する取り組みとなっています。

 

 実際にこのような取り組みに参加したロシアの先生方は、「このモデルは、カリキュラムや生徒や指導のつながりをよりよく理解するために役立った。」という風に振り返っています。確かに、自分の知識がほかの先生や勉強するために読んだ本(cPCK)から来ることや、実際の授業での子どもたちの理解度や反応に影響を受ける事(ePCK)を理解するだけでも、これからどのように自分の能力を高めていこうか、計画を立てられるような気もしますね。

 

研究で使う用

 もう1つ、研究分野からドイツの事例を紹介します。キルシュナーさんという研究者は2016年までの自分の研究をリファインドコンセンサスモデルと整合すること試みています。キルシュナーさんの研究は、科学を教える先生の知識を理解することを目的としていました。そのために、科学を教える先生の知識を調査するテストを開発することなどを研究の中で行っていました。その後、キルシュナーさんは自分が調査したPCKはcPCKであると判断しています。

 このように自分の研究をRCMの中に位置付けて考えることによって、研究者が測ろうとしたPCKと実際に測定したPCKが実際には違っていたということを避けることができます。研究者が測ろうとしていたPCKが実際にはどんな性質を持つ知識だったのかを正確に記述することにより、ほかの人に伝えるときに例えば「PCKの中でもcPCKを測ったので、ePCK・pPCKとごちゃまぜにして考えないでくださいね。」と暗に伝えることができます。研究で扱ったPCKきちんと位置付けることで、ほかの研究との比較もしやすくなるし、主張もわかりやすくなるという有用性があります。

 

さいごに

 近年、研究が進んできているPCKの分野ですが、もっと研究が進んで子どもたちに分かりやすく、ためになる教育が行き届くことにつながるといいなあと思っています。

 

「夜野すてらと鏡音レン - 地球人」のミュージックビデオが、本日8月1日(月)の0時よりYouTubeで公開スタート。ぜひチェックしてください。


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