近年のPCKに関わる研究の動向と理科授業【その3】

この記事は、近年のPCKに関わる研究の動向と理科授業【その2】の続きとなります。

 

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前回の復習

バラバラになっていたPCKについての見解を一貫性のあるものにするため、2008年にアベルさんがPCKの重要な4つの側面について明らかにしました。前回はその3つ目までお伝えしたところで終わっていました。

ちなみに3つ目までは

①PCKは、独立した知識のカテゴリーである

②PCKは、個別の知識要素で構成されている

③PCKは、経験により育っていく

というものでした。

 

PCKの4つ目の側面

④PCKの中心は「トピック」にあり

PCKを考えるとき「科学全体を教えるためのPCK」や「数学全体を教えるためのPCK」として考えないということです。つまり、「振り子の法則」「地震の仕組み」「化学反応」「食物連鎖」など、扱う話題(トピック)によってPCKは変わってくるという考え方です。

確かに「振り子の法則」を教えるのがうまい先生が、ほかの分野に関してもすべて同じような上手さで授業ができるかと言ったら、うーん?って思いますね。

 

第1回PCKサミット開催

 2012年にはPCK研究者を世界中から招待して、PCKを世界で共通の見解にそろえるためのサミットが行われました。これが第1回PCKサミットです。ここには数学教育研究者と科学教育研究者が出席し、PCKについて議論が行われました。

第1回PCKサミットでは、PCKと、関係する知識やスキルに関するモデルが作成され、PCKの性質がより明確にされました。

・PCKはやっぱりほかの知識とは別の独立した知識である

・感情的な要素はPCKの構成要素から外す。教師のPCKの内容や性質に影響を与えるけど、PCKの構成要素そのものではない。

・知識(いつでもどこでも頭の中にあって、インタビューやアンケートで確かめられるもの)とスキル(授業中や教えているときに行動に現れるもの)の両方で定義

・PCKは「パーソナルPCK」と「パーソナルPCK&スキル」に分類される。

「パーソナルPCK」は教師が持っている知識、知識の背景、授業の計画を立てる段階に関係している。

「パーソナルPCK&スキル」は特定の学生に特定の目的で特定のトピックを特定の方法で教える行為に関係している。

 つまり、知識(いつでもどこでも頭の中にあって、インタビューやアンケートで確かめられるもの)と行為(授業中や教えているときに行動に現れるもの)に名前を付けた。

・教師の推論も、教師のPCKの一部であると考えられる。

・PCKはトピック固有の教師の知識とされている。

・PCKは持っている個人個人で異なる。

・第1回PCKサミットで作成されたモデルには、生徒の成果(どのぐらいできるようになったか)とPCKには相互関係があることも説明されている。

 

いっぱいありますね。なんとなくイメージできればいいと思います。次に、箇条書きの最後の部分、PCKと生徒の成果の関係について少しだけ見ていきます。

 

やっぱりPCKが高い方が生徒は教えたことを理解しやすいの?

 PCKが「分かりやすく教えるための知識」なのだから、PCKが高い方が生徒の成績も上がるでしょ。と、皆さんお思いでしょう。でも実は、今までの研究では、「PCKが高いほど、生徒の成果がよくなる」という研究がある一方で、「PCKと生徒の成果は関係していない」という研究もあります。

 えぇ…そしたらPCKって意味ない可能性が出てくるじゃん。

 なんで違う結果が出てきてしまうのでしょう。現在考えられているのは「みんなPCKを測ろうとしているけれど、測っているものが研究によって違う」ことです。

 たとえばKellerさんたちは2017年に「PCKの測定」を目標に研究をしています。どうやって測定しようかなあと考えて、Kellerさんたちは「学校の先生にテストをしてそれを採点すればPCKを測れるでしょ」と、ペーパーテストでPCKを調べました。

 一方で、KunterさんとKonstantopoulosさんは2010年にやっぱり「PCKの測定」を目標に研究をしています。どうやって測定しようかなあと考えて、KunterさんとKonstantopoulosさんは「学校の先生と一緒に授業のビデオを見て、コメントをしてもらえばPCKを測れるでしょ」と、ビデオに対する教師のコメントでPCKを調べました。

 2つの研究は「PCKの測定」という同じ目標に向かっていますが、ペーパーテストで測れるのは「頭の中にどれだけ教えるための知識が入っているか」、自分で授業をしたビデオを見てコメントをもらうことで測れるのは「実際の現場でどのように行動して、そこにはどんな理由があったか」です。このような測定方法の違いが、「PCKと生徒の成果」の関係に矛盾が出てしまう1つの要因であることが考えられます。

 

ここまでのまとめ

PCKの概念は科学教育の分野で広く知られています。しかし、これまでに研究者の間で解釈が異なってきたため、研究結果をいまいち役立てられていない状況にあります。次の記事では、PCKの具体的な研究がどのように行われてきたかを大まかに見ていくことで「これからどうしようね…」という方々のためのヒントを探していこうと思います。

 

 

「季節待つ席」のミュージックビデオが、本日2月26日(土)の22時よりYouTubeで公開スタート。ぜひチェックしてください。


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